その道にハートはあるか?という話(或いはローマ上空でワインに酔えばという話)
カタール航空機はバルセロナへ向かう途上、ローマ上空を飛んだ。このときワインで気持ち良くなった頭でふと思い出したのが、哲人皇帝と呼ばれたマルクス アウレーリウスというエライ人の言葉である。曰く『各々のものはそれがつくられた目的に向かって惹かれる。惹かれるものの中に各々の目的がある。目的のあるところに各々の利益と善がある』
*ローマ近郊上空からの風景
いいことを言ってくれる。さすがである。ひとは各人が心底から惹かれるものに向かって情熱的に生きるのが正しい。どう生きようがそれは各人の自由だが、生き方には正しい生き方とそうでない生き方があるのだ。
ある人の目からはくだらない生き方に見えようが、そんな意見は大きなお世話である。人は本心から惹かれる物事に向かって生きるのが良い。それがハートのある道 "Path with heart" というものなのだろう。
*その道にハートはあるか?ハートがあればその道を往き、なければ往く必要はない。
生きる道は星の数ほどあるが、どの道も人をどこへも導いてはくれない。ハートのある道か否かただそれだけである。この言葉、二〇年前カスタネダ にドンファンの言葉として教えてもらったのだが今も色褪せず、むしろますます光り輝いて僕の心に強烈に響いて来る。
さっぱりハートを感じないがただ惰性で生きる、昔の僕の生き方ではあるが、やはりそんな生き方は真っ平御免であるし、人として誤りである。誤った道を選択することも許されるくらいに人は自由だともいえるが、そんな道を往くのは御免こうむりたい。だから僕は旅をするのだ。
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(c) Carlos Castaneda, 松田隆智 訳