旅に溺れてはならない。旅は日常生活に活かしてこそ。稽古と同じだ。日常のなかで活かせてこそ意味がある。そうして初めて旅に価値が生まれる。だから旅そのものが目的にはなりえない。旅を通じて何を欲するのか。旅は手段に過ぎないのであって、何を目的とするかが大問題である。
と、ここまで書いておいてなんだが、人生には果たすべき目的があると感じるのもどうやら手前勝手な思い込みに過ぎない。そもそも人生に初めから組み込まれている目的なぞありはしないという考え方で自分的にはファイナルアンサーである。
日々の慌ただしさのなかに心身をすり減らしていてはそんなことを考える余裕すらなくなってしまう。目の前の雑事から離れられるというのもまた、旅が与えてくれる貴重な機会である。こういうことに思い至れるのもまた旅の効用であろうと思う。
旅に溺れてはならないが、旅はそれだけでもやはり楽しい。