楽しい投資研究所の旅日記

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アルハンブラ宮殿のこと

(※2018年9月 グラナダ

グラナダアルハンブラ宮殿を訪れた。

ナスル朝グラナダ王国時代の遺跡。丘の上というか山上の城砦である。実際に足を踏み入れてみればそこはちょっとした街のようでもある。

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*山の上の城塞

1492年カスティージャ王国がグラナダを陥落させたことを以って8百年近く続いたレコンキスタは完了、キリスト教勢力はイベリア半島からイスラーム教勢力を地中海に追い落とした。

アルハンブラにはグラナダ市中心部から歩いて行ける(バスでも行ける)が、そこへ至る道は急坂でちょっとした登山の趣がある。グラナダ滞在中、アルハンブラ宮殿は2度訪れたが、いずれも徒歩で赴いた。さいわい天気も良かったし、緑のトンネルを歩いているようで心地良くもあった。

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*急坂

坂の途中に「アルハンブラ物語」を著したアメリカ人ワシントン アーヴィングの像がある。19世紀に書かれたこの書物が世に出る前、アルハンブラ宮殿はただの廃墟としてほとんど顧みられることがなかった。この「物語」がベストセラーとなった結果、アルハンブラは再び注目を集め、いまやスペイン有数の世界遺産である。マーケティングが決定的に重要なのだということを教えてくれるいい話である。

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*アーヴィング像

山頂、アルハンブラの門前に水場がある。この丘の上(というか山上)の水道施設は13世紀頃ナスル朝ムハンマド2世の統治下、半世紀以上かけて造られた。

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*門前の水場。装飾はグラナダ陥落後のものでしょう

ざくろの彫刻が目を引く。アルハンブラだけでなく、グラナダ市内のあちらこちらで目にする。グラナダスペイン語ざくろの意。街並みの様子が割れたざくろに似ていたからこの名が付いたという話が伝えられている。

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ざくろの彫刻(水場の右から3番目)

また堅固な城塞都市グラナダの陥落を象徴するものとしてキリスト教徒に多く造り置かれたともいわれる。ただ俗説は多い。

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アルハンブラから見たグラナダの街並み

アルハンブラは、赤い城砦という意味のアラビア語、アル ハムラーが語源といわれる。たしかにこの周辺の土壌は赤みがかっている。これについても諸説がある。

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*裁きの門から宮殿内に入る。この門には何やらまじないが施されているという

アルハンブラ宮殿見学にも予約は必須である。時間を指定して訪れる。指定時刻前には入り口前に長い行列ができる。予約なしでも興味深く見て回れるがやはり内部は見るべきである。 

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アルハンブラの猫

ちなみにアルハンブラ宮殿敷地内には国営の宿パラドールがある。実はここに泊まりたかったのだがかなりの人気で予約が取れなかった。グラナダを訪れると決めたのなら何はさておいてもパラドールの予約から始めるべきかもしれない。

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*パラドール サン フランシスコ

イスラーム建築様式の石畳が涼しげである。キリスト教圏の石畳とは風合いが異なる。

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*涼しげな石畳

アルハンブラ宮殿のなかに「カルロス5世宮殿」なる場所がある。円形の中庭っぽいところでくつろぐ。

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*カルロス5世宮殿。再征服者による増築箇所

建築様式が他と異なりおやと思うが、なるほどここはナスル朝が滅んで三〇年の後、神聖ローマ帝国皇帝カルロス5世(カール5世)によって増築された箇所だった。この人物、コルドバのメスキータを大改築し、その後部下を責めるように嘆いたスペイン王カルロス1世と同一人物である。

日差しは強いのだが風通しが良く涼しい。丸く縁取られた青空がきれいである。グラナダは酷暑の地だがアルハンブラ宮殿は特に涼しい場所を選んで建てられた。

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*ライオンの中庭

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*ライオン像近影

 壁に施された細密で精緻な幾何文様アラベスクが凄い。見ているだけで気が遠くなる。3Dプリンタが当時既にあったのではないかと考えねば理性が追いつかないレベルである。

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*この写真を拡大して見てほしい

宮殿内は広い。想像以上に広い。本当にちょっとした街である。敷地内に公衆トイレはあるが数は少ない。やっと見つけたお手洗いは清掃中で男性陣が列を成していた。

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*この掃除が長い。男の子は女性用お手洗いで用を足せるから良い

アルハンブラ宮殿ナスル朝歴代君主の手により約百年かけて造られた。その敷地は広大である。東に位置するヘネラリフェも必見の美しい離宮なのだがこれがまた遠いのだ。

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*ヘネラリフェからナスル宮を望む。この辺りすべてがアルハンブラである

この広さを覚悟して訪れた方が良い。暑さ対策も大事である。

午後も遅くなった頃、アルハンブラを後にして下山、ホテル近くのバル(ラ リヴィエラ)で遅い昼食をとった。

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*毎日訪れた行きつけのバル

日が暮れるとアルハンブラはライトアップされて夜空を背景に浮かび上がるような美しさを見せる。ダーロ川沿いの道を、夜のアルハンブラを見上げながら散歩した。警戒しながら歩きはしたが、特段、身の危険を感じる場面はなかった。

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*ライトアップされたアルハンブラ

アンダルシア州イスラーム教圏の人々がイベリア半島を指して呼んだアル=アンダルスを語源とする。キリスト教勢力による再征服の後、アラビア語の使用が禁じられた時代もあったが、スペイン語のなかにアラビア語を源とすることばは多く、当時の名残りが今も息づく。有名どころではアルコールもアラビア語起源である。

イスラームといえば近年、中東の過激な集団のイメージが強いかもしれないが、実際にイスラーム教圏の国々を訪れてみれば、穏やかな雰囲気のなか安心感を覚える場面が多い。イスラーム建築・装飾も素敵でその美しさ、洗練の度合には思わず息をのむ。

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アルハンブラの二姉妹の間、天井の鍾乳石飾り

おかしな人間はどの世界にもいる。偏った情報に触れ続ければ偏ったイメージを植え付けられ、偏見を生んでしまう。そうならぬよう気を付けながらこれからも旅を続けていきたい。

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アルハンブラの壁にあったアラベスク文様