旅の準備について
旅は準備するところから始まっており、むしろ準備しているときが実は最も重要な旅の時間であるといえ、そして帰国したからといって終わるものでもない。
旅は事前準備がとても大事で知識がないと何も見えないし聞こえない。何も知覚できずに帰国することになると思う。何も知らず、下調べもせずに行った方が旅は有益だというひともいるが少なくとも僕はそうではない。
*グラナダの風景
旅先で最も思い出に残るのは常に現地の人とのコミュニケーションであった。旅の質を決める最大の要素がコミュニケーションであるといっていいと思う。
*飲みニケーション(バルセロナ、市場のバル)
そういう意味で、旅を楽しいものとすることにもっとも貢献してくれたのは言葉を教えてくれる本(スペイン語をど素人にも教えてくれる本)だった。
そして反省するに言葉の勉強はもっと早くから始めるべきだった。次の旅行が決まったのならその瞬間からことばの勉強を始めて良い。一年前に始めるくらいでちょうどよい。出発の日はあっという間にやって来る。
*旅の準備
他者とのコミュニケーションはもちろん大事だが、それ以上に自分自身とのコミュニケーションも大切である。知識をそれなりに蓄えることが重要になる。知識のあるなしで自問自答の質が変わってくるからだ。
人生の質を決めるのはコミュニケーションの質だ、なかでも一番重要なのはあなた自身とのコミュニケーションだ、とはある人に教わったことだが、このことはなるほどと素直に受け止めている。
*バルセロナ、王の広場
なので、その地の歴史を教えてくれる本はとても有難い。学術書は多々あるが素人が手軽に読めて、網羅的で、価格も手ごろという本は文字通りなかなかない。その点、明石書店の「~を知るための〇章シリーズ」は執筆者が重厚で内容も高品質で本当にすばらしい。今回もたいへんお世話になった。
*明石書店を尊敬している
スペインを訪れることなくしてここまでスペインの歴史を勉強する気になれただろうか。ここまで真剣にスペイン語を学ぶ気になれただろうか。旅から学ぶことは多々あるが、学びの意欲を格段に高めてくれる旅の効用というものをもっと意識していこうと思う。
また、あえて旅行先とは全く関係のない本も意識して持って行った。「曹操注解 孫子の兵法」がそれである。ランドリー店で洗濯しながら読んだ。
*マドリードのランドリー店にいたマスコット犬
持参した雑誌 The Economist 誌にリーマン破綻から一〇年後の今、信用収縮の発生とその後を振り返ってみればポピュリスト政治家の横行があるとあって、もちろんこれとはまるで関係のない曹操の記した孫子への注に
民衆を愛するのもほどほどにしないと悪質なたかりが横暴をふるってやりたい放題全部のつけを支払わされることになる(中略)無差別に民衆のエゴイズムを受け入れたらとんでもない重荷を背負って昼夜兼行で走り続けるようなもので (曹操注解 孫子の兵法 https://amzn.to/2L2zeUM 中島悟史著)
とある。これは孫子本文の
「私は人民を愛する」という理想主義の指導者は民衆に裏切られる
に対してのものなのだがなるほど、ポピュリストは自身が戴く民衆のエゴの重みに押しつぶされる結果になると示唆しているように思われて興味深い。
*旅先での洗濯も趣があった
というわけで今回記した旅行記に用いた参考文献は次の通りである。自分自身のための覚書として記しておく。
<旅先へ持参したもの>
<持参することは断念したもの> ※重過ぎるので
なお、帰国後興味が高じて購入したものも今回多い。次の通りである。
- イスラームから見た世界史
- イスラームの歴史
- イスラーム思想史
- ユダヤ人
- ハプスブルク帝国の情報メディア革命―近代郵便制度の誕生
- イギリスの歴史【帝国の衝撃】―イギリス中学校歴史教科書
- 世界システム論講義: ヨーロッパと近代世界
- 大英帝国衰亡史
- イギリス近代史講義
実は次に訪れてみたいのはイランとイスラエルである。訪れずに死ねるかと思う。ということは明日にでも訪れる価値のある地域といえる(同時に訪れるのは難しそうな国々ではあるけれども)。
*次の準備
ところで、どの国へ行ってもイギリスの影が見え隠れして、これが太陽の沈まぬといわれた国の存在感かと感心する。そしてイギリスが植民地を手放したからといって彼の国の太陽が没したとは思えない。したたかに暗躍するのがあの国の本性であるように今も感じる。
*どこを訪れても英国の影がある(写真は2013年10月のロンドン)