プラド美術館とベラスケスのこと
(※2018年9月 マドリード)
マドリードには午後3時半に着いた。マドリードはヨーロッパ タイム ゾーンのかなり西に寄ったところに位置するので、日はまだ中天に高い。セビージャから高速鉄道AVEで2時間38分。車中はワインもガスパッチョもおいしく快適であった。
*アトーチャ駅。スペイン最大の駅
ホテルはマドリードのアトーチャ駅から1km程度なので歩くことにする。マドリードは基本的に平坦だと聞いていたのでちょっと舐めていた。そんなわけないのである。特にスーツケース持ちには石畳の箇所がきつい。キャスターへのダメージも気になる。昨年リモワを買ったとき、ショップの店員さんから「5年間の製品保証が付きます、ただし通常使用に限ります」といわれ、通常使用でスーツケースが壊れるとかないだろうとそのときは思った。しかし石畳はなるほどきつい。
*石畳
さらにいえば航空貨物として何度もぶん投げられているはずである。すでに複数個所のへこみが見受けられる。保証込みであるがゆえにあの値段なのだ。旅に出ると勉強になることばかりである。
*美術館通り。プラドを横目にホテルへ向かう
さて、マドリードで押さえたホテルはNHコレクション パセオ デル プラド。プラド美術館が道を挟んで真向かいにある。我々にしてみれば最高の立地である。
*ようやく着いた
チェックインしたのは夕方だったが、部屋に荷物を置いてすぐプラド美術館へ向かった。チケット売り場で年間パスポート(ミュージアムパス)を即購入する。ひとり36.06ユーロ(約4,700円)。マドリードに滞在するのは8日間の予定だがプラドには入りびたるつもりなので迷わない。
*ホテルからプラド(屋根)が見える
ちなみにプラド美術館には無料で入る方法があって、それには18時を待てばよい。午後6時以降は無料で開放されるのだ。気前が良い。その時間を待つ人々の長い行列が毎夕できる。
*行列
プラドの館内は撮影不可である。目玉はベラスケスの「ラス・メニーナス」。ディエゴ・ベラスケスは宮廷画家であり学芸員であり、最終的には官僚としても最高レベルにまで出世した人物。セビージャ出身。23歳のときフェリペ4世に見込まれて仕えることとなった。スペイン画壇の顔として、また世界最高峰の画家として、圧倒的な存在感を放つ。
*公式ガイドブックは日本語版も完備。19.5ユーロ。これは買って良い
プラド美術館にある作品の収集にはベラスケス自身が深く関与した。また雇い主である国王の許可を得てイタリアを2度旅した。旅行期間はいずれも数年間に及んだが王に呼び戻され泣く泣く帰国したとも。役人としても有能だったようで、当時画家としては異例の重職に抜擢される。
ただ出世して後は官僚の業務に忙殺されたようで、その後の画業における製作点数は激減した。
国王の信頼も厚く、王の娘の結婚式の責任者を仰せつかる。その大役を全うした直後、61歳で死去。過労死だったとも伝えられている。過労死してよい人物だったはずがない。