バルセロナとスリの話
(※2018年9月 バルセロナ)
旅先で日本人の方を見かけても基本的に声をかけたりしないのだが、声をかけられればお話しもする。
僕は日本人とすぐにばれるようで、ヨーロッパの街を歩いているとコニチワなどと声をかけられたりもする。一方、家内の場合はたいていアニョハセヨーである。韓国人と思われているようだ。旅先で韓国人旅行者の方からアー ユー コリアン?と声をかけられているところも何度か見た。
それはともかく、自国語で話しかけられると人は無意識にでも親近感を覚えてしまうものらしい。そして話しかける側はそれを知った上で行っているようで、そういう輩の店に近付けばたいてい高くつくというのは旅先あるあるである。
*カタルーニャ広場
さて、バルセロナの宿にはカタルーニャ広場近くのホテル カサ キャンパーを押さえた。ランブラス通りから路地に入って4ブロック目に位置する。このホテル、廊下を挟んで部屋をふたつ使える。一方の部屋にはベッドとシャワールームがあり、もう一方にはテーブルとソファ、それにハンモックが吊るしてある。こういうコンセプトのホテルは初めてである。
*なかなか快適なハンモック
そのホテルの朝食レストランで、日本人旅行者のご夫婦にお会いした。娘さんがホテルも航空券も手配してくれたのだという。いい話である。お互いバルセロナに着いたばかりであったので、気を付けて楽しみましょうといい別れた。
三日目の朝、レストランでまたお見かけしたので無視するのもあれかなと声をおかけした。なにやら少々どんよりされている。
聞けば昨日、スリに遭ったという。バルセロナ滞在二日目、手持ちのユーロ5万円相当を持っていかれた、高い授業料だったと話してくださった。思い当たるのは地下鉄。現金をそっくり失ったのでホテルに帰るのにも難儀した。電車に乗れば皆が泥棒に見えるとも。気の毒な話である。
このときは僕も知らなかったのだが、バルセロナは凶悪犯罪が少ない半面、スリ被害が多い。その多さは世界トップに君臨するレベルである。有名観光施設も要注意なのだが地下鉄での被害がもっとも多い。美術館のなかも油断は禁物である。
*バルセロナの地下鉄
スリはたいてい複数人がチームを組んでターゲットを狙う。電車内でのスリは手元を隠すのにジャケットを用いることも多い。ジャケットを身に着けた上でさらに別のジャケットで手元を覆うスリもいるらしく、そこまでくればもうかわいいという他ない。
そういえば、ランブラス通りを歩いているとき、何やら大声を張り上げながら走り去る集団を見かけた。スリ集団を誰かが追いかけていたものと思われる。また、ホテル近くのランドリー店で洗濯していたときにも、店の目の前で中年男性のスリが取り押さえられ、警察に突き出されていた。
*奥でへたり込んでいるのがスリのおじさん
なぜそんなにスリが多いのかは不明なのだが、こちらでは一日400ユーロまでの窃盗行為は罰金で済むという。そんな取り締まりの方針に問題があるのかもしれない。そもそもいくら盗んだとかスリ本人に訊いてわかるものなのか。
*にぎわうランブラス通り
その後また、ホテルでそのご夫婦とお話しする機会があったのだが、目にする人が皆スリに見えて疲れるので食事は近くの通りで済ませていると話されていた。ああ、ランブラス通りなら店はいくらでもあるので問題ないですねといったところ、いやランブラス通りから横に入ったホテル前の路地で済ませているのだと。パエージャも食べたが普通だったという。
*ランブラス通りから横に入ったホテル前の路地
ところで、先日会った日本人旅行者はもっと高い授業料を払っていた、財布ごと9万円スられたんですってとも仰っていた。心なしか嬉しそうだったのが何やら印象深い。
僕はバルセロナがけっこう好きなのだが、日本人はいろんな意味で上得意客の様子である。